恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
「うん、まあ、社員旅行までには。それまでは仕事がバタつくからこんな呑気なことわざわざみんなの耳に入れるのもねえ」
「全然呑気なことじゃないですけどね……」
西原さんと話す表情は、ごく普通、に見える。
全くいつも通りで、いつも通りに西原さんに優しくて目は柔らかい。
その目がちら、と私に動くと、やっぱりちょっと冷やこくなる。
これもいつもどおり。
「さっきから何見てんの」
「え、えっと……あの。大丈夫、でしたか?」
西原さんのご結婚のこと、だとか本当に聞きたい心配はそれだけれど、こんなとこで西原さんが目の前に居て聞けるわけもない。
「春日住建? 問題ないよ。お前が心配するようなことは何もないから」
少し突き放すような言葉に聞こえたのは、気のせいだろうか。
だけどその日から、東屋さんと接することが極端に少なくなった。
避けられてる、というほど大袈裟なものじゃない。
だけど、以前は何かと私に資料やら頼んでくれていたのが、私以外の人間にも頼むようになった。
ただ、それだけのこと。