恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
指導、という名目もないし多分それが普通のことなのだろうけれど、朝に西原さんとコーヒーを淹れている時にも出会うことがなくなった。


「一花さん、元気ないね?」

「えっ? そうですか? 元気ですよ!」


西原さんが気遣ってくれて、正反対のことを言った。


全然ないですよ!
殆ど目を合わせることもなくなったし、話も余り出来てない。


何か話しかけようとしても、いつも忙しそうで上手く捕まらない。


私一人東屋さんの無駄な心配ばっかり勝手にしてて、心配されるようなことはないって言われたけど、心配はしようと思ってするものじゃないでしょ!


と、ちょっと言い返してやりたくなっている、最近。


私なんかに元気づけられたくもないかもしれないけれど、尚更鬱陶しいって思われるかもしれないけれど。
私は、生意気な後輩だって思われてても怒られても冷たくされても、間近にいられればそれでよかったのに。


そんな風に考えれば泣きたくなるから、ひたすら近づくチャンスばっかり探してる。
目下、目指すは社員旅行だ。


ぐ、と拳を握っているとコーヒーの香りが強く漂い始めた。
私がぼんやり考え事をしている間に、西原さんがサーバーからコーヒーをカップに注ぎ始めていた。


「すみません、ぼんやりしてて! 私なんにも手伝ってない……」

「大丈夫。なんか一生懸命考えてたからそっとしてた」


くすくすと笑う横顔に、すみません、としょぼくれる。

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