恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】


「ここは、女子みんな仲良いし。何かあれば、きっと話聞いてくれるから。まあ、ちょっと野次馬根性的なとこもあるけど、基本、悪気無いし」


最後のカップに、コーヒーを注ぎ終えて、西原さんが顔を上げ笑う。


だから一人で考え込まないで、と励ましてくれているのだと、気づいた。


「望美とか。遠慮なく、相談していいから。勿論、私でもいいんだけど……私は ……ほら、もうすぐ退職しちゃうしね」

「ありがとうございます……」

「うんうん」



じん、と目の奥が熱くなって、慌てて唇を噛む。
そんな私の頭を、ぽんぽんと叩いてくれる表情は押し付けがましくない、柔らかな優しさだった。


短い間、一緒に仕事をしただけだ。
それだけでも伝わる、とても優しい人で気遣いのある人で……魅力的な人。


東屋さんが好きになるのもよくわかる、ひしひしと感じる。


あなたみたいに、私はなりたい。
なりたかった。



「好きです」

「ええっ?!」



東屋さんの好きな人で、私の憧れの人。


ぽかん、と戸惑った顔をしている西原さんに、どうやら伝わっていないようだともう一度言葉にする。


「尊敬してます、すごく」

「あ、ああ、うん。ちょっとびっくりしたけどちゃんとわかってる! ありがとう」


驚かせてしまった。
どうも、私は思ったことをぽろっと言ったりするから、度々言葉のチョイスを間違えているのかもしれない。


「今みたいに、言えたらいいのにね」


不意にそんなことを言われて、頭を撫でられた。
西原さんには、どうやら私の好きな人はバレてしまっているようだと、なんとなく気付く。


結局、堪えきれずに私はべそべそ泣いた。


恋をしてから、私は随分泣くことが多くなった気がする。

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