恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】

六月。
この会社では、毎年この時期に社員旅行が入るらしい。


というのも、建築業界は雨の時期は比較的暇なのと、多分オフシーズンで旅行費が安いから?
と勝手に推測する。


なので皆が言うには雨にあうことが多いそうだけど、今年は空梅雨なのか天候には恵まれた。
大型バスでの移動で、車内から既にお酒が入っている人もいる。


女子は一塊に座って、皆でお菓子を回したりと可愛らしいものだ。


東屋さんとは、少し席が離れてしまった。
それでも、仕事の時よりは長く一緒に居られるし。


なんとか、話しかけたりできないかな。
と、ずっとそわそわしている私がいる。


研修期間中はあんなに長い時間一緒に居たのに、と思うとなんだか懐かしい。
今は何か、話しかけるのにも理由が必要なそんな空気で、そのことが酷く寂しい。


……くじけないけど。
折角社員旅行だもん。


ちょっとくらい楽しい思いをしたっていいはずだもん。


しかしながらなかなかチャンスがない。


観光地でバスを降り、思い思いの方角に散策しはじめた時も、東屋さんはずっと男性社員と一緒だ。
そんな中に「一緒に回りませんかぁ」とか入っていくのはちょっと白々しいし空気読めとか怒られそう。



「東屋さん!一緒に回りませんかぁ」



躊躇っていると、今まさに白々しいと思っていたセリフで近づいて行った女の子がいて思わず唖然とする。



「受付の子達とはぐれちゃってぇ」



あれは、受付の池内マミさんだ。


豊満なバストとぽってりした唇が印象的な美人で、毎日受付で見るから比較的早い段階で顔と名前を覚えてしまった。


あ、あの人って……東屋さん狙いなのか。
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