恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
「何やってんのマミちゃん。またいじめられてんの?」
マミちゃん?!
名前で呼ぶの?!
「えー? そんなことないよぉ。最近は仲いいよ。多分?」
東屋さんを含む男性陣の中に、サラリと入り込んでしまう色気満載の彼女。
中でもやっぱり、東屋さんとの距離が、若干近め。
「気付いてないだけなんじゃないの」
「えー? ひどぉい」
じゃれつくように凭れ掛かったその時、東屋さんの手が一瞬彼女の腰に添えられた。
ガン、と頭を何かで殴られたような衝撃に、それ以上見ていられなくて咄嗟に土産物屋の影に隠れてしゃがみ込んだ。
え、何。
何今の、相手西原さんじゃないのになんであんなに親し気なの?
いやいやいや。
東屋さんだってそりゃ色んな付き合いがあって当然だし好きな人は西原さんでも他に女の人の知り合いが居たって何の不思議もないけどどういう付き合い?
ショックの余り混乱する頭の中で、物凄く今更ながらに気づいたことがある。
東屋さんはモテる。
今まで「さよさんlove」オーラが強すぎて全く気になったことがなかったけど、当然モテないはずがない。
……池内さんって、年いくつなんだろう。
私よりは年上のはずだけど、それほど変わらない気がする。
一つ二つ違っただけなのに、色気は雲泥の差。
っていうか、何、あの胸。
恐る恐る、自分の胸を見下ろした。
決してないわけではないけど、あの胸を見た後では貧相にしか見えなくなった。
基本装備が全然違う。
ずずん、と地べたに座り込むくらいの勢いで落ち込んでいて、気付かなかった。
いつの間にか、西原さんや柳原さんたちがいなくなっていて、私は一人その土産物屋に取り残されていた。
「……あれ?」
周囲を見渡しても、もう東屋さん達もいない。
棚に隠れてしゃがみ込んでいたから、きっと誰も気づかなかったんだろう。
やば。
全く知らない町。
一度で道を覚えない私は、どちらから来たのかもさっぱりわからなくなっていた。