恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
「さよさん? 捕獲したんで俺が連れて行きます」
携帯の行方を求めて振り仰ぐと、東屋さんが居た。
私の携帯を耳に当てて二言三言会話すると、視線が私に落ちて来てぽいっと掌に携帯も戻されてくる。
「何迷子になってんの。どんくさ」
「迷子じゃないですはぐれただけです」
「だからそれが迷子だろ」
なんだか随分、久しぶりに思えた。
こんな風に間近で東屋さんが私の目を見て話すのも、すぐに仕事を理由に離れていかないことも。
「こっち。まだ時間はあるけど、そろそろ集まり始める頃だろうから」
歩き始める東屋さんを慌てて追いかけて隣に並んだ。
「もしかして、探してくれたんですか」
「道覚えられないくせに、さよさん達と居ないから。戻ってみただけ」
「ありがとうございます」
それは探してくれたってことじゃないんでしょうか。
もしもそうじゃなくても、私が道を覚えられないことを気に留めていてくれただけで嬉しい。
さっき池内さんに誘われてたのは、良かったんだろうか。
他にも人が一緒に居たし、抜け出してきてくれたのかもしれない。
嬉しい。
ほんのちょっと、バスまで戻る間だけでも二人で歩けることが嬉しくて、つい口元が綻んでくる。