恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】

私にだって、流石に今の意味くらいはわかって。
唇に蘇ったキスの記憶に、咄嗟に手で覆って赤くなっていく頬を抑えようとした。


東屋さんが近づいていった男性ばかりのグループの中、一人だけ池内さんが混じり込んでいる。
あの人なら、東屋さんが言ったような女としての慰め方もうまくできるのだろうか。


そんなの、嫌だ。


考え始めたらそのことでもう頭がいっぱいになって、ぐちゃぐちゃになってしまった。


バスは再び移動して、今日宿泊のホテルに向かう。
その間も、私の頭の中を占めていたのは当然、一つだけ。


「ええーっ! なんで?! ひとちゃん浴衣着ないの?! 温泉は?!」

「入ってきましたけど糸ちゃんみたいな人がいるのに浴衣着るわけないじゃないですか」

「ひとちゃん俺にはほんっとに冷たいよね!」


宴会場に集まると、早速糸ちゃんにお決まりの絡まれ方をする。
温泉地のホテルなので、大浴場や露天風呂があり、人によっては浴衣を着ているけれど女子は殆ど私服のままだ。


池内さんは、浴衣だった。
髪も緩く結い上げて、うなじが綺麗だった。

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