恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
仲居さんが火をつけてくれた小さな卓上コンロの上で、一人用の土鍋が沸々言い始めていて、薄く膜が張り始めたら湯葉が食べられるそう。
わあ楽しみ。
「あ。東屋のヤツ肩抱いた」
「えっ?!」
がばっ、と顔を上げて東屋さんの方を見た。
見ると、相変わらず池内さんは隣に居て親し気に話かけてはいたけれど、肩を抱いたりはしていなかった。
あ、あれ?
と戸惑いながら糸ちゃんを見ると、にやーっと嫌な顔をする。
「うっそーん」
「いっ、糸ちゃん酷い最低です!」
「ひとちゃんは可愛いなー、いっつもキラッキラした目で見てるもんなバレバレだよほんとに」
もうごまかす気にもならない。
私は周囲にもわかってしまうくらい、顔面で語っているらしい。
「からかわないでくださいっ」
「だって可愛いからついー。でもさ、ひとちゃんもあんまり遠慮してたらまずいんじゃない?」
「え?」
「池内さん、あれ絶対この社員旅行で仕留める気満々だろ。目がハンター」