恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
薄雲が流れたのか、急に周囲の暗闇が和らいで月明りの下に東屋さんの表情がはっきり見えた。
まっすぐ私を見据える目に、思考は麻痺させられて。
自分がそう聞かれた時の答えを全く用意出来てないままここにきてしまっていた私は、ぽろりと素直に零してしまう。
「……な、慰めに来ました」
……土壇場で言葉の選択間違える、この感じ。
言ってしまってから、急速に恥ずかしくなって俯いた。
ち、違う。
何かほかにもっと言い方があるだろうに、何いってんの?
糸ちゃんのせいだ。
『一時の慰め』だとか言うからずっとそれが頭に引っかかってて。
「何言ってんのお前」
案の定、吹き出すような声と共に、東屋さんが数歩近づいた。
俯いた先に、彼の靴。
言葉は間違った感じでも、嘘じゃないんだけど。
好きな人が傷付いてたら、慰めたい、癒したい、それは自分でありたい。
ヤキモチ妬いて、私の恋は煽られたように貪欲になる。
こうなったら辛くなる気がしてた、だから無欲のままでいたかったのに。
じわ、涙が滲みかけた時。
私の頬に、ひんやりとした手のひらが触れた。