恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
「顔、あっつ」
笑いながら、私の頬を撫でる。
大きな掌は頬だけじゃなく私の耳やその後ろまで指が届いて、するすると肌を撫でた。
人差し指が耳の縁を辿って耳朶を弄る。
なんだか、ぞわぞわとくすぐったいような感覚が背筋を走って、ぴくんと肩をすくめた。
「…………、参った」
「え?」
「手、出すつもりないんだけどな、ほんとに」
はあ、と溜め息の音。
言いたいことを計りかねて、見上げれば優しい目が困ったように見下ろしていて。
その間も、指が肌をくすぐり続ける。
耳の後ろを、爪先が掻くようにうなじに降りた時。
「んっ」
信じられないくらい甘い声が無意識に出た。
ぞく、とした感覚にたまらず喉が仰け反った瞬間、ふわりとお酒の匂いのする吐息が、温かいまま唇に触る。
唇同士が触れる、ほんの少し前。
東屋さんの気持ちが迷うように、揺れた気がした。
引き返さないで、と咄嗟に手を伸ばしかけたけど。
それより先に、そんな心の揺れは気のせいだったみたいに激しく深く、唇が重ねられた。
「んんっ、」
大きく開かされて、舌が割り込む。
その強さに腰が引ければ、両手で首筋を捕まれて逃げる隙などなくなった。
初めてキスした時とは違う。
性急で余裕のないキスは、それでも私の意識を蕩けさせるには十分で。
力が抜けて、しがみつくように身体を彼に預けた。
膝が崩れるより先に、首筋を掴んでいた手が降りて腰を支える。
一瞬離れた唇は追いかけられて再び重なった。
再開したキスは、一転して啄むだけの穏やかなものになる。