恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
「あーあ」
「んっ……、ん?」
「もう戻れないな」
啄む合間の会話。
やってしまった、と後悔のように聞こえて薄く目を開ける。
融けてぼやけた視界でも、わかる。
後悔というよりも、しょうがない、と開き直った諦めに似た表情。
「俺、男居る女には絶対手は出さないんだけど」
何やってんだか、と強く抱き寄せられた耳元で囁かれた。
彼が作った、例外。
そのことに、背中を押された。
「……か、れた」
「なに?」
聞き取りづらかったのか、東屋さんの腕が緩んで少し隙間が出来た。
まだ膝に力が入らなくて、私の手は東屋さんのシャツを掴んで離れられないまま。
「……わ、かれてしまいました」
緊張で、声が震える。
「どうしても、好きな人が出来て、わかれてしまいました……はは……」
心変わりするなんて。
軽蔑されてしまうだろうか。
それが、すごく怖くて、なんとか笑ったつもりだけれど頬が引き攣ったのがわかる。
東屋さんの反応を知るのが怖くて、ずっと目の前の胸元ばかりを見て顔を上げられなかった。