恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
やんややんやとからかわれ、どれだけ突っつかれても昨夜のことを口には出来ず、私自身まだ頭の整理がついてない。
というか、とりあえず柳原さんの態度を見ているに、どうやら私の恋は糸ちゃん西原さんだけでなく、柳原さんにもバレていたようで。
って、どこまでバレバレなのか。
私は一体、顔面でどれだけ語ってるのか、思っているよりたくさんの人に私の気持ちは筒抜けだったらしい。
もしかして、私も東屋さんみたいに花でも飛ばしているのだろうか。
移動中の大型バスの中、突然背後からぼそっと聞こえた呟きがある。
行きは別のとこにいたはずなのに、なぜか帰りは真後ろの席に糸ちゃんが居た。
「まあ、あれだよな。西原さんにしたらこれでちょっと、安心して結婚できるんじゃない?」
「何が言いたいんですか糸ちゃん」
「え? 別に。ちらっとそう思っただけ」
糸ちゃんはやっぱり性格が悪い。
深く考えることは断固拒否して、窓の外を見た。
陽が傾きかけて、空の色が微妙に変わり始める。
バスはもう帰路に着いていて、後は一直線に会社に向かうだけ。
心臓が、とくん、とくん、とくん、と忙しなくて落ち着かなくて、長いようで短い時間は、あっという間に過ぎていく。
「それじゃ、お疲れ様でしたー!」
「ってか、土日社員旅行で月曜から通常勤務って鬼だよね」
旅行の余韻あり、同時に疲労の色も少し見え隠れする声。
皆それぞれ荷物を持って、仲間内で飲みに行く者やら直帰する者やら散らばり始めるその中で、ぱち、と東屋さんと目が合った。