恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
「全然得意じゃないじゃないですか!」
「はは、実はやるのも初めてだった。いいだろ倒れたんだから」
戦利品のお菓子を山程、大型景品用なんだろうロゴの入った大きな袋に入れてもらった。
食べきれないほどのお菓子、それはまあ日保ちするものだし良いけれど。
「そりゃ倒れますよ!五千円も使ったら!」
「ゲームなんだからクリアしないと面白くない」
大人の権力(現金)振りかざして無理やり倒した、なんて大人げない遊び方。
「東屋さんがこんなに大人げないなんて」
「倒れた瞬間叫んで喜んだくせに」
「当たり前です、あのまま倒れなかったら一万円くらい使いそうですもん」
いい大人が二人、お菓子タワーのためにああでもないこうでもないと大騒ぎして散財して、漸く再び帰路に着く私たち。
いつもの駅のホームで、そういえば二人並んで立つのは初めてだ。
会社の人はもうとっくに帰ってる頃だろう。
「やっといつもの調子に戻った」
「え?」
それって、私を気遣ってくれたってことでしょうか。
アナウンスが流れて、ホームに風が巻き起こる。
手を引かれ、黙ったまま大人しく入って来た電車に乗った。