恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
「また静かになった」
「だって東屋さんが。いつもみたいに意地悪くしてくれないといつもの調子にはなれないようです」
「俺そんなに意地悪ばっかりしたっけ?」
「え。まさかの無意識って」
「でもまあ、飴と鞭ってことにしとこうか。今日はこれから意地悪するし、先に優しくしとくの」
「え?」
「ん?」
繋いだ手が一度開いて、指と指が互い違いになるように手のひらを握られた。
い……意地悪って、どんな。
私が思いつくような、平和な意地悪ではないようなことだけは、ヒシヒシと東屋さんの表情から伝わってくる。
とりあえずこんな会話を電車の中でしている私達は、傍目に立派な、恋人同士に見えるだろうか。
東屋さんの部屋を訪れるのは二回目で、一度目がアレだったし。
物凄く物凄く、緊張していたのだけれど。
「ほら」
リビングに通されて、荷物を置いてすぐ。
東屋さんから差し出されたものに、緊張はいっぺんにどこかへ飛んだ。