恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
「それは……それなりに、彼氏もいたので」
「ああ、そう……」
「え、ダメですか」
「いや? そういうのは関係ない」
東屋さんの腕を掴んだまま、心配になって顔を覗き込むのだが。
逸らした目線が、すっと私の方に戻ってくる。
その目がちょっと真剣で、私の方が今度は少し、動揺する。
腕が再び、私に伸びてきて今度は顔面じゃなくて首の後ろを捕らえられた。
くん、と引き寄せられて前屈みになる。
いつの間にか自分の調子を取り戻した東屋さんに、またペースを奪われている。
「まあ……慣れてるなら、遠慮することもないかもしれないけど」
そこで初めて、東屋さんの言った男慣れというのがどういう意味なのかを、ちゃんと理解した。
「しないでください。大丈夫です慣れてますから」
……嘘ばっかり言ってしまった。
だって、初めてだって知ったら尚更手を出してくれない気がした。
「……生意気」
「わっ」
くるん、と突如、視界が移動する。
背中を支えられ、ぽふんと柔らかいクッションの上に落とされた。
「一花ってやっぱちょっとズレてるよな」
「え?」
「ずるいってのは。告白の返事をはぐらかしてる上での、この状況のことかと思ってた」