恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
「……それって、一緒に居たくないってことですか」
「ちげーよ馬鹿」
「ば、馬鹿って言っ……」
「馬鹿ついでにもう少しだけ待ってて」
馬鹿ついで?
もう少しだけ待ってて?
「……東屋さん。文体繋がらない」
ちょっとふざけたような言葉回しなのに、なぜだか声はそうは聞こえなかった。
顔をちゃんと見たいのに、私の首筋に伏せたまま見せてはくれないまま、思いもよらない言葉を聞く。
「大事にしたいと思ってる。だから生半可な状態で応えたくない。理屈じゃなくて一花のせいでもなくて、俺の問題」
「え?」
「区切りを付けたいだけだよ、そんなに待たせないからそれまで大人しくしてな。糸井なんかに付け込まれんなよ」
その意味を、即座には信じられなくて、何度も何度も頭の中で反芻させた。
背中に回ったうでが、ぎゅうっと強く私を抱きしめる。
それでもまだ実感が湧かなくて、東屋さんの服を掴んで縋り付く。
宥めるようにすり寄った唇が肌に触れ、縋り付いてもいいのだと信じてもいいのだと言われた気がした。
「や、約束」
「ん?」
「告白の答えの、約束をもらったと思っていいんですか」
おそるおそる、とそんな言葉が出た。
それが可笑しかったのか、ふっと首筋で笑う声。
「やけに謙虚だな」
「だって、なんか、現実じゃないみたいで、」
「じゃあ、約束の印でもつけとく?」
彼がやっと、顔を上げてくれた。
といっても、鼻がこすれ合うくらいに近くてやっぱり輪郭がぼやけてて、なんだかそうすることで照れくささを隠しているような感じがする。
だけど指は大胆に、彼が昨日つけた痕から辿るように首筋を下りていく。
「今度はどこにつけようか」