恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
「大体お前なんなの? あんだけ俺に顔面で好き好き言っといて、なんで糸井とあんな仲良いの?」
「ちょ、そんなに言ってな、顔面って酷くないですか!」
「何掛け合い漫才やってんの? ちょっかいかけられてんのわかってないの?」
「え、だって糸ちゃんは、ああいう、」
「その糸ちゃん呼びもどうなの?」
唖然とした。
これまで、涼しい顔で放置されていたことが、きっと気にもされていないだろうなと思っていたことが、まるで堰を切ったように流れ出し私に浴びせかけられていて。
その意味をわかれば、自然口元が緩むのは仕方ないと思う。
「それって、まさか、やきも、」
最後までは唇に邪魔されて、言わせてもらえなかった。
拒んだりしないのに、僅かな躊躇いも与えないような強さで、舌が隙間をこじ開ける。
誘い出された舌に、かり、と軽く歯を当てられて腰が震えた。
脳が、融そう。
太腿を辿り上がってくる手のひらが、シャツの裾を捲りながら腰に触れた。
ぴく、と身体が震える度に、力が入らなくなって、顎の力も抜けて、より深く東屋さんを受け入れてしまう。
キスを終えても閉じられないままの下唇を彼が舐め、少し怒った口調で言った。
「やっぱ、味見はする」
「ふ、ぁ?」
「散々煽ってくれた罰。服の中の、どこがいい?」
胸?
それとももっと、際どいとこにつけようか。
言いながら、腰のラインを辿った指先が、胸の辺りであることに気が付くのだ。
「……ノーブラ、て」
だって。
誘惑するつもりでお風呂出てきたんだもん。
という言い訳をできるほどの余裕はなかった。
素肌の胸に、男の人が触れることが初めてで、頭の中が火がついたように熱くなる。