恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
見つけた時計はサイドテーブルの上の目覚まし時計。針は十時をとうに過ぎて、十一時になろうとしていた。
「わ……寝過ぎ……」
といっても、何時に寝たのかよく覚えていないけど。
きぃ、と扉が開いて東屋さんがペットボトルの水を持って来てくれた。
「ありがとうございます。すみません、もうお昼近いですね……」
蓋を弛めてから差し出してくれて、受け取った時に初めて手の力が入りづらいことに気付く。
「いいよ。疲れさせたの俺だし」
彼がベッドに腰を下ろして私に微笑む。
その一言は詳細に昨夜の記憶を掘り起こして、中でも熱を孕んだ彼の表情がはっきり脳裏に浮かびまた顔が熱くなった。
だから余計に、口に含んだ冷たい水が心地好い。
気恥ずかしくて目線を落とし、黙々と水を飲む私の正面、じっと見つめられているのがひしひし伝わる。
「どこか痛む?」
そう言いながら、ふんわりと私の頭を撫でた。
「だいじょうぶ、です」
「ほんとに?」
「はい」
ホントはあちこち痛いし、ひりひりする。
でもそんなこと、ものすごくどうでもよくなるくらい東屋さんが優しくて、何より心配してくれているのが伝わってくる。
なんだかそれがすごく照れくさくて嬉しくて、ついふんにゃりと顔が緩んだ。
「何、嬉しそうな顔して」
「え、だって嬉しいから」
「……あー……そ」
あんまりへらへらしてるから呆れられたのだろうか。
物凄い素っ気ない返事があったかと思ったら、不意にぼふっと上から東屋さんのシャツを被せられた。
昨日のじゃなくて、洗い立てのふんわりいい香りがする。
「着といて」
「あ、ありがとうございます」
「無茶された直後でまた襲われたくなかったら」
「え」