恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】


八月に入って殺人的な猛暑がやって来た。
私たち女性社員は余り外に出ることがないから、通勤時くらいだけれど外回りにでる営業は大変だと思う。


社用車が使える時ばかりでもないのだ。
でもなんでか東屋さんはいつも涼し気だ。

汗をかいても涼し気で素敵だ。


「あーぢー……、ひとちゃんアイスコーヒーある?」


糸ちゃんは内勤している時でも今にも溶けそうにだらーんとしてて、とにかく暑いのは苦手らしい。
今も給湯室に入ってくるなり、丸椅子に腰かけて後ろの壁に凭れて伸びきっている。


「作ってありますよ。冷蔵庫に入れてあるのでどうぞご自由に」


昼休憩後、西原さんの後を継いで私は皆のコーヒーを淹れる習慣を続けていた。
西原さんは無理強いはしなかったけれど、私も彼女のコーヒーにほっと心が休まったことがあるので、出来る範囲で続けていきたいと思う。


が、そんな私の邪魔をしに、時々糸ちゃんが現れる。
これが厄介でめんどくさい。


東屋さんが居る時は避けてるのは、わざとなんだろうか。
この頃東屋さんは外に出てたり社内に居てもじっとしてないことが多くて、なんだか忙しそうだ。


夜とか休日は一緒にいることが多いから、中々会えないとか話せないとかそういう寂しさはないけれど、疲れてないかなとか、ちょっと心配になる。


「今日も東屋外出してんねー、アイツ夏バテとかしないの?」

「気合が違います。糸ちゃんとは」


今オフィスにいる全員分のコーヒーを用意している間、糸ちゃんはガラスのコップにアイスコーヒーを自分で注いで、おでこに乗せている。



「今日もデートすんの?」

「多分。時間が合えばご飯一緒に食べようって言ってたから」

「ちぇー、上手くいってるようで何よりー」

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