恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
言葉に棘のようなものを感じた。
何か、ちくちく心に引っかかる言い方で、嫌な感じ。
「さあ……どうなんでしょう、わからないけど」
救ったとか救われたとか、そういうのは東屋さんの心の中のことだから。
知りたいと思ったら、糸ちゃんじゃなくて東屋さんに聞く。
だけどやっぱり、あの頃東屋さんは落ち込んでたんだなあ。
いい気分転換になった、ってぽろっと溢してたし、すごくすごく優しかったのも、吹っ切らなければと東屋さん自身が思ってたからなのかもしれない。
でもそんなこと関係ないし、私に慰められることが出来たらって思ってた。
こうして、彼女という立場になれるなんて望んでなかったし。
「私は、東屋さんが好きなだけですから」
うん。
そうだ、何があろうとそのスタンスは変わらない。
言葉にして、自分でも再確認したのだけど、糸ちゃんの余計な追撃が続く。
「だよねー、それは見てりゃわかるわ。ひとちゃんが納得して幸せならそれでいいんだけど」
「ありがとうございます」
「西原さんももう来ることないしね。安心じゃん」
「……だからなんで、そういう言い方を、」
むかっとして糸ちゃんを見れば、きょとんとびっくりした顔をしている。
「え、俺なんか変なこと言った?」
わざとじゃないの?
それとも、私が敏感に受け取り過ぎてるだけなのか。
『さよさん』がいないから私なのだと、言外に突きつけられているような気がした。