恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
悪気があるのかないのか、そんな風に惚けた顔をされては言い返す言葉も見つからなかった。
「……なんでもないです。みんなにコーヒー配って来ます」
ホットコーヒーを全て淹れ終え、残りのグラスに冷蔵庫で冷やしてあったアイスコーヒーを注ぐ。早くしてしまおう、と手が逸る。
糸ちゃんとこの話をもうしたくなかった。
西原さんがもしも、まだ結婚の予定もなく変わらず勤続していたら、私たちは今どんな状況だろう?
考えても仕方がないことを、無理矢理掘り起こされるから。
「じゃ、糸ちゃんも早く仕事戻ってくださいよ」
「うぃーす。あ、ひとちゃん今度海行かない?」
「行くわけないですよね」
「えーっ! あ、二人でって意味じゃねえよ? 東屋ももちろん、他に女の子も誘って何人かで……」
「糸ちゃんがいないなら行く」
ぷい、とあからさまにそっぽを向いて、私はコーヒーを乗せたトレーを持ち上げる。
「ひでー!」とわざとらしい泣き真似をする糸ちゃんを置き去りに、給湯室から逃げた。
「……なんでもないです。みんなにコーヒー配って来ます」
ホットコーヒーを全て淹れ終え、残りのグラスに冷蔵庫で冷やしてあったアイスコーヒーを注ぐ。早くしてしまおう、と手が逸る。
糸ちゃんとこの話をもうしたくなかった。
西原さんがもしも、まだ結婚の予定もなく変わらず勤続していたら、私たちは今どんな状況だろう?
考えても仕方がないことを、無理矢理掘り起こされるから。
「じゃ、糸ちゃんも早く仕事戻ってくださいよ」
「うぃーす。あ、ひとちゃん今度海行かない?」
「行くわけないですよね」
「えーっ! あ、二人でって意味じゃねえよ? 東屋ももちろん、他に女の子も誘って何人かで……」
「糸ちゃんがいないなら行く」
ぷい、とあからさまにそっぽを向いて、私はコーヒーを乗せたトレーを持ち上げる。
「ひでー!」とわざとらしい泣き真似をする糸ちゃんを置き去りに、給湯室から逃げた。