恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
自信がないのがいけないのかな、と思う。
だから糸ちゃんの言葉にいちいち過敏になってしまったんだろうか。
西原さんは尊敬できる先輩だったし、明るくて可愛らしくて素敵な人だった。
敵うとか思ったことがない。
ふと頭に浮かんだのは、初めて見た日に脳裏に焼き付いた、東屋さんの横顔だった。
片想いだった頃はあんなに好きだったあの横顔。
西原さんを見る時に、今もまだあんな風に花びらを撒き散らして綻ばせるだろうかと思ったら……それを見つめる勇気はない、かもしれない。
コーヒーを配り終えて、トレーを戻しに再び給湯室に向かう。
まだ糸ちゃんが居たら嫌だな、と思っていたら、何か慌てて給湯室を出ていく姿を見た。
だらーんとし過ぎて、急ぎの仕事でも忘れてたのだろうか。
糸ちゃんめざまあみろと思いながら、給湯室の引き戸を開ける。
「あ……!」
そこには、くっきりと眉根を寄せた東屋さんが立っていて、一瞬イライラトゲトゲオーラにびっくりしたけれど。
私と目が合うと、少しだけ和らいだ。
「おかえりなさい。どうかしましたか」
「ただいま。コーヒー貰おうと思って来たら糸井が居ていらっと来て追い払った」
「ちょっ、イラっと来てって、ひどい」
と言いつつ笑ってしまった。
糸ちゃんのばーか。
ちょっと反省すればいい。
だけど、東屋さんはまだ不機嫌そうな顔のままだった。
「糸井、度々来るの?」
「え?」
「ここに、というか、お前に絡みに」