恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
東屋さんの眉が、きゅっと顰められて動きが止まった。
「東屋さん?」
「それしかないの? 水着」
「え、そうですね……去年買ったのなんですけど」
「今年は新しいの買えば。俺買うし」
「いえそんな! それにそんな暇ないじゃないですか、すぐ週末ですよ?」
食事しながら、ふたりで日程だけはさっさと決まってしまった。
今週末、お盆休みに入る直前の土日で宿泊出来そうなところを探すと東屋さんが言ってくれた。
水着を買いに行く時間は、さすがに取れそうにない。
「お気に入りなのに去年一回しか着れてなくて残念だなって思ってたんです。白っていってもちょっと花柄が入っててキャミもついてて可愛くて」
「ああ、キャミついてんの……」
そう言うと、固まっていた顔が少し動いたけど、何やら不穏な表情は消えない。
しかも、半分脱がされかけて開けた胸元をじっと見て、だ。
ちょっと怖い。
嫌だって言ってるのに、まさかつけないよね?
とは思うけど。
何か考えてそうな彼の目から逃れようと、両手で胸元を隠す。
「ダメ。です、よ」
と、念押ししたつもりなのに、ぽちっと私は何かを押したらしい。
突如、両手首を掴まれて遠慮なく胸元から退かされた。