恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
海へ行こう!【東屋side】
「痕つけたら、水着着れなくなります」



そう言われて、ああそうか確かに、と納得はした。
納得はしたけれど。


キスマークだらけの水着姿の彼女を、他人の目になど晒したくはない。
自分の印は基本見えない場所に付けるものだと思っているし、恥ずかしい思いをさせたくないし、指摘されて赤くなる顔を他の誰かに見せたいわけでもない。


衝動的になりふり構わずつけてしまったことはあるけれど、あられもない姿を想像させるようなものを人目に触れさせたくない、というのが本来俺の思うところだ。


ただ。
目の前には、しどけなく開けた襟元とずらした下着から覗く、白磁の柔らかな膨らみ(ちょっと控えめな)。


行為の度に痕を残しているわけじゃないけど、今夜は無性に、刻み付けたかった。
多分それは、未だに糸井が彼女に近づこうとしているのだと知ったせいだ。


大体、あれな。


なんであいつは糸ちゃんで、俺はいつまでも東屋さんなの?


まあ、強制して呼ばせんのもなんか、嫌だし。
別に糸井なんか気にしてないけど。


ただ、恥ずかしがって拒否する紗世は、無駄に劣情を煽るわけで。


「……は、恥ずかしいからダメです」

「……わかった。……っか、それより水着ってどんなの?」

「え? 白のビキニですが」


は?


と、一瞬耳を疑った。
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