恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
いつもならギラギラと体力を削ぎ取るだけの熱い陽射しも、海ともなればそれほど苦でもない。
パラソルの下で、浮き輪とビーチボールを膨らませている間、紗世がそわそわと落ち着きなくこちらを見ているので、先に浮き輪を渡す。
「はい」
「ありがとうございますっ」
「……似合う」
「む……子供っぽいって言いたいんですか」
「尖ってる口はね」
そう言うと拗ねて尖った唇を慌てて引込めた。
水着と腰の浮き輪のイメージがアンバランスだけど、エロいのが軽減されてそのくらいでいい。
「東屋さん、早く!」
「はいはい」
とりあえずそんなことよりも、彼女は海に早く入りたいらしい。
ビーチサンダルを脱いだ素足でレジャーシートから降りて砂を踏むと、「熱い!」とはしゃぎながら跳ねる。
珍しく彼女の方から俺の手を掴んで引っ張った。
恥ずかしがる様子もないから、気付いてもいないんだろうけど。
「水、綺麗ですねー!」
「本当だ」
波うち際を進んで、膝上くらいの高さまで来て足元を見る。
海水が少しも濁っておらず、足の指の爪まではっきり見えた。
一回り以上小さい紗世の足の爪には、普段はないピンクのペディキュアが塗られている。