恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
『会いに行ったら』
別に今すぐ挨拶に行くとかそんな意味じゃないのは重々わかっているけれど、ぽろっと何気なくそんな言葉が出てくるのが、すごく嬉しい。
「紗世ってもしかして一人っ子?」
「そうです。だから両親共、半端なく構ってくるので……今回初里帰りで相手するの大変でした」
「ははっ。それで一週間まるまる実家か」
「昼間に一回、大学の時の友達とランチは行きましたけど……あ、それでその時に……」
「何?」
「お盆の間に一度、仲の良かった皆で集まってたんですけど、私も含めて顔出せなかった子もいて、九月にもう一度集まろうって言われてて……」
そう。
京介くんもいる、大学の仲良しメンバーだ。
どうしたらいいか考えあぐねてお盆は断ったのだけど、このままずっと京介くんを気にして断り続けるべきなのか。
わからなくなってここはもう、東屋さんに素直に聞いてみることにした。
「迷ってる?」
「男の子もいて、元彼も来るんです。多分」
そう言うと、東屋さんは「ああ」と納得したように頷いた。
私の迷いの意味が伝わったんだろう。
顎に指の関節をあてて少し考え込む仕草をしている。
やっぱり嫌なものなのかなと思ったけれど、そのあと彼の言葉は私の予測とはちょっと違ったものだった。
「行って、大丈夫?」
「え?」
「元彼と、どんな別れ方になったのか聞いてないから。それが心配ないなら、楽しんで来たら」
「あ……その人とは、ちょっと揉めたけど最後は納得して別れられたと、思う」
まさか、そういう心配をされると思ってなかったから、驚いてしまった。
「ほんとに?」
「はい」
「じゃあ、他の子たちは大事な友達だろ。行っといで」