恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
離れていくなよ、と。
最後は少し声が掠れて、弱々しく聞こえた。
座ったまま、強い力で抱きしめられてがっしりとした肩に顔をこすりつけて泣いた。
「最初は腹立ったぺら口だって今なら可愛くて仕方ない。俺にだけ向けてたらまあいいかって思うくらい」
「あ、ずまや、さ」
「大事なとこで言葉選ぶのが下手くそなとこも、ぺら口なくせに肝心なことは言えないとこも」
「だったらなんで?」
ひっく、としゃくりあげながら、声を絞り出す。
東屋さんの言葉が嘘じゃないって、声や肌から感情が全部伝わってくる。
だったら余計に、なんで、と思う。
「紗世?」
「さっき、給湯室でっ……西原さんと話してた」
「それは、お前がいると思って」
「すごく、幸せそうな横顔だった。ちょっと赤くて花が咲いたみたいに綻んで、私がひとめぼれした、西原さんを見つめる横顔で何にも変わってなくて、だから私……」
だから私、逃げ出したんだ。
でもさっき、私に向けてくれた表情も同じだった。