恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
知ってしまえば、本当になんでもないことで。
それも嘘だなんて疑う余地もなく、すとんと胸に落ち着いた。
と……同時に、私も激しく羞恥心が湧いてくる。
「……え? な、何話したんですか」
「だから、紗世のことを」
「私の何?」
「……色々」
い、色々って何。
普段の私たちを改めて思い返せば、何をするにも結局なんだかんだといちゃついてて、例えば私が友人に話すとして考えても、惚気しか浮かばない。
初秋の夜の公園、ふたりして眉を寄せて顔を真っ赤に染めてベンチで見つめ合う。
「ど、どんな内容って聞いてるのに、」
「……西原さんに聞けば。電話しとけよ、心配してるから」
照れを振り払うように、彼は乱暴に頭を掻いて徐に唇を重ねてくる。
あまりに唐突でちょっとびっくりしたけど、キスすることで彼が狂わされた調子を取り戻そうとしているようで、そんなとこが、とても嬉しくて。
いつも涼しいポーカーフェイスの彼が、そこまで自分を崩して追いかけてくれたことが嬉しくて、私は目を閉じた。