恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
「何?」
「糸ちゃんと喧嘩したって聞いて」
「ああ……ちょっと殴り合いになっただけ」
「ちょっとって……」
たいしたことじゃない、とでも言いたいのだろうか。
彼は髪をタオルで乱暴に拭きながら顔を背け、話を流そうとする。
だけど私はちゃんと聞きたくて、再び正面に回り込んで頬の傷に触れた。
「大きな怪我がなくて、良かったですけど……」
「大袈裟だろ、喧嘩くらいで。それより俺も言いたいことあるんだけど」
むす、といきなり不機嫌になった彼が、ずん、っと一歩私に向かってくる。
何やら圧を感じて一歩下がると、また一歩。
「えっ? えっ?」
それを数回繰り返すと、足が引っ掛かってぼふっとベッド上に尻餅を付いた。
その私に彼がまだ、真正面から詰め寄ってくる。
とん、と肩を押されてベッドに仰向けに倒されてしまった。