恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
「そんなに好きなら、もっと押せば良かったじゃないですか。強引に押し倒しちゃえば案外うまくいったんじゃないですか?」
押して押して、押し捲ればなんとかなったんじゃないのかな。
あんなに綺麗な気持ちを向けられて、心に響かない女なんていないはずだ。
なのに、こんなに一途に想われて、どうして振ったりできるのか。
きっとあと一歩、押しが足りなかっただけだとそう思いたかった。
東屋さんみたいな人に押されたら、女ならきっと流されて当然だよ。
なのに東屋さんがひどく彼女を神聖視しているような気がして、それがなぜかすごく苦しくて……自分の感情がなんなのかわからない。
「女なんてそんなもんですよ」
西原さんだって、きっとそんなもんですよ。
ずくんずくんと脈打つように痛む。
酷く棘のある言葉を吐いてから初めて気づく。
この感情は、嫉妬だと。
今、すごく失礼なことを言った。
しまった、と口を覆ったけれど。
「痛っ!」
突然、その手首に痛みが走った。
ガタン、と椅子とテーブルがぶつかる音がして一瞬目を閉じる。
次に開いた時には、すぐ目の前に無表情の冷たい東屋さんの顔があって、その向こうに天井が見えていた。