恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
気付けばどちらもすっかりはだけて、その頃にはもう、かずくんの目から理性は消えていた。


彼の吐息が甘さを帯びて、私は背を仰け反らせて、鳴く。
もう何度もふたりで夜を過ごしているのに、いつもと違った。


今までだって、信じてるつもりだった。
だけど、心の奥に仕舞った小さな不安の欠片がきっと、昇華されたのだ。


西原さんに敵う自信がなくて、それが一番怖かった。
私の心の奥にずっと、決して敵うことない人として存在していた『さよさん』に、怯えていた。


そんなのは、端から居なかったのに。
彼はちゃんと、私を見ていてくれたのに。


身体の奥から込み上げてくる熱が、爪先まで私を痺れさせ、脳を揺らす。




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