恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
ハッピーエピ
◇
結婚式場は、電車で小一時間ほどの場所にある港街だった。
広大な埋立地に真新しい住宅地とお洒落な商業施設がある。
そこから少し離れた石畳の広場に、白い洋館を思わせる披露宴会場のある建物と海の見える教会が並んでいる。
かずくんとふたりで、披露宴会場のロビーに足を踏み入れると、丸い柱の影からひょっこり顔を出したのは。
「……い、いとちゃん?」
「ひとちゃん、おはよ」
かずくんが足を止めたので私も止まる。
三メートルほど離れたままだが、それでもはっきりとわかるくらいに。
糸ちゃんの左頬が、腫れあがっていた。
「どっ、どうしたんですかその顔!」
「どうもこうも……聞いてないの?」
「かず……あ、東屋さんと殴り合いになったって聞きましたけど……」
そう。
殴り合いになったと聞いた。だけどかずくんは少し赤いくらいだったから、多分糸ちゃんもその程度だろうと思ってたのに。
糸ちゃんは、距離を保ったまま涙目で抗議してきた。
「殴り合い!? よく言う、ほぼ殴られたの俺だから!」
「俺は避けただけ。お前がどんくさいんだろ」
横からかずくんの腕が伸びて、私の肩をしっかりと抱きながら、しれっとそう言い放つ。
結婚式場は、電車で小一時間ほどの場所にある港街だった。
広大な埋立地に真新しい住宅地とお洒落な商業施設がある。
そこから少し離れた石畳の広場に、白い洋館を思わせる披露宴会場のある建物と海の見える教会が並んでいる。
かずくんとふたりで、披露宴会場のロビーに足を踏み入れると、丸い柱の影からひょっこり顔を出したのは。
「……い、いとちゃん?」
「ひとちゃん、おはよ」
かずくんが足を止めたので私も止まる。
三メートルほど離れたままだが、それでもはっきりとわかるくらいに。
糸ちゃんの左頬が、腫れあがっていた。
「どっ、どうしたんですかその顔!」
「どうもこうも……聞いてないの?」
「かず……あ、東屋さんと殴り合いになったって聞きましたけど……」
そう。
殴り合いになったと聞いた。だけどかずくんは少し赤いくらいだったから、多分糸ちゃんもその程度だろうと思ってたのに。
糸ちゃんは、距離を保ったまま涙目で抗議してきた。
「殴り合い!? よく言う、ほぼ殴られたの俺だから!」
「俺は避けただけ。お前がどんくさいんだろ」
横からかずくんの腕が伸びて、私の肩をしっかりと抱きながら、しれっとそう言い放つ。