恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
腰が、痛い。
テーブルの上に押し倒されて、角が当たっているからだ。
だけどそれを訴えられる状況では、なく。
「へえ。一花さんはつまり、押し倒されたら簡単にその気になるんだ。こんな風に?」
「えっ、ちが……」
違う。
こういう意味じゃない。
私が言った「押し倒せ」とは押して押して押し捲れという意味で。
でも確かに、普通に「押し倒せ」と言えばこういうことだ。
私の言い方が、まずかったのだけど。
ずき、と痛んだのは腰ではなく胸だ。
一花さん、と呼んだ彼のニュアンスが、明らかに今までより距離があった。
一線を、引かれたのだ。
「そ、そうじゃなくて……」
「何が。どう違うの」
ショックを受けている間もなく、東屋さんの顔が更に近づき息が頬に触れた。
手が少しも動かない。
伸し掛かられて、身体も思うように動かせない。
何より、射貫くような冷たい目で見降ろされて、怖くて指一本、動かせない。
余りの近さに、耐えきれなくなってぎゅっと目を瞑る。
そのまま固まって暫く息の音を聞く。
動けないままでいると、やがて溜息が聞こえすっと身体の上から重みが消えた。