恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】

結局三十分ほどの遅刻で到着した私達だったが、既にみんな付きだしをあてに酒が入り始めたところだった。
さすがに三十分は間が持たなかったんだろう、本当申し訳ない。


男女なんとなく入り混じっている中、「ひとちゃん!」と賑やかな声に呼ばれて私は糸井さんの横に座った。
相変わらず黒髪短髪、眼鏡の奥の細い目がにっと笑うとますます細くなる。


「お疲れー! なんか大変だった?」

「すみません、遅くなって。色々と私が、」

「酒飲める方? 何がいい? とりあえずビール?」

「いえ! ビールは苦手で!」

「そうなんだ可愛いね。酎ハイは? 梅酒は?」


テンション高めでやけに甲斐甲斐しい。
何も言わなくてもぽんぽんと私の前にオシボリととり皿が置かれて、酒のメニューを渡される。しかもそれを一緒に覗き込む。


糸井さんもう飲んでるくせに早くも次の酒を選んでおくつもりらしい。


西原さんが言ってた通り、果実酒メニューが多い。
ゆずにマンゴー、巨峰にライチ。


とりあえず一杯目は梅ソーダ割にして、全員そろって乾杯。
そこからは向かいに座る男性二人と隣の糸井さんに話しかけられ、あれこれと質問攻めにあった。


「ひとちゃんって大学どこ?」

「S大です」

「へえ、いいとこ……」

「でもないですよね、微妙ですみません」

「糸井が言ってたけど、彼氏いるってホント?」

「ほんとですよ」

「へえええ。デートとかどこ行くの?」


人のデートの行き先とか聞いて一体どうするつもりなのか。
何か聞く価値あるのだろうか?


そんな話より、私は今日中になんとしても東屋さんと話さなければいけないのだけど。


< 38 / 310 >

この作品をシェア

pagetop