恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
「次何飲む?」
「ライチがいいです」
ソーダ割で、と言ったつもりだったのだけど、届いたのはライチ酒のロックだった。
ちびちびと飲みながら糸井さんの質問を聞き流す。
甘くて美味しいけど、すぐ酔いが回りそう。
しっかりしなくちゃ、私は今は酔っぱらったり糸井さんとおしゃべりに花を咲かせている場合ではないのだ。
ちら、と東屋さんの方を盗み見る。
彼は、他の営業部の男性と話をしていた。
なんとか、今夜中にきちんと謝罪するチャンスが欲しい。
時折チラ見を続けていたら、東屋さんの隣に座っていた人が立ちあがり、部長や課長の座っているテーブルにビールを注ぎに行ったのが見えた。
今がチャンス、と同時に東屋さんに近づくヒントも得て、私はテーブルの上で半分以上は残っているビール瓶に手を伸ばした。
「あ。ひとちゃん注いでくれんの嬉しい」
「すみません、東屋さんに注ぎに行ってきます」
「えー! 酷くねえ?! 俺にはずっと手酌で飲ませてたくせに!」
「女だからお酌しなくちゃとかいうのは嫌です。私は酌したい人にしに行きます」
「余計酷い!」
ガン!
とショックを受けた顔の糸井さんは放置して……っていうかもう十分相手したと思うのにしつこい。
糸井さんにはしたくないけど、後で一応社会人として上司の方々にはお酌しに行かねばなるまい、と思いつつ。
「東屋さんには一か月お世話になったし、ちゃんとお礼言いたいんです。ちょっと外しますね」
ビール瓶を片手に立ち上がった。