恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】


黙……。
反応が余りにないので恐る恐る東屋さんの顔まで視線を上げて、うっと喉を詰まらせる。


それだけか、とでも言いたげな。
すっと細められた目が、じっと私を見ている。


間違えた?
何を間違えた?
言い方?
内容?


ぐるぐるぐる、と頭の回転を速めている間も目が逸れなくて圧力に押し出されるように慌てて次の謝罪の言葉を探す。



「あ! あの、東屋さんだけでなく、西原さんにも失礼でした。さっきのは……」

「……」

「貶めるような、言い方でした。すみません、本当に」



反省文の提出に何度もやり直しをさせられているような気分だ。
だらだら冷や汗を掻きながら、さっき緩んだ涙腺がうっかり緩みそうで、ぎゅっと目頭に力を入れてもう一声。



「も、もうこのぺら口は絶対封印します、絶対!」

「無理だろ絶対」


さっきまでの沈黙はなんだと言いたくなるくらいに、すぱんと切り返された。
だけどやっと反応してくれた、と顔を上げると、彼は少しだけ、ほんの少しだけ口元を緩めてくれていた。



「そ……そんなことないです。ちゃんと封印します」

「無理すんな。期待して裏切られる方がダメージでかいし」

「うっ」

「それに俺もやり過ぎたし」

「え」



東屋さんが、もう一度グラスを呷って残りを飲み干した。
そのままテーブルに置く前にグラスを差し出され、私は慌ててビール瓶を傾ける。


ちょっと動揺したせいか泡が多くなってしまった。



「悪いのは私で、」

「手首、痛くなかった?」



ちら、と東屋さんの目が私の手首を見る。
たったそれだけのことで、なんだかさっき手首を掴まれた時のことを思い出し頬が熱くなった。

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