恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
「いえ、全然! 大丈夫です!」
びくともしなくて驚いたけど、確かにちょっとは痛かったけど。
手が、すごく大きくて。
え……で、だから?
なんでそれで顔が熱くなんの?
手に持ったビール瓶で冷やしてしまいたいぐらいだったが、赤い顔がわざわざバレるような奇行をするわけにもいかない。
だけど、東屋さんは私の様子には気づいていなかった。
ちょっと余裕がないような表情で、片手で前髪をかき上げ溜息を吐く。
「ごめん。つい、カッとなった」
「いえ、ほんとに……私が悪かったので」
「いつまでもこれじゃ駄目だってわかってんだけど、だから余計頭に血が上った。一花は悪くない」
「そんなことは」
「無神経だけど」
「……すみません」
無神経なのはホントに、ホントにもう、申し訳ないとしか言えないのだけど。
でも、引っかかるのは、このままじゃダメだという東屋さんの言葉だった。
それは、前進か後退か、どっちの意味だろう?
言葉だけではわからないけれど、もう一度西原さんにぶつかってみようかという前向きな感情はその横顔からは見えなくて。
何か言おうと思うのだけど、ぺら口を封印しますと言った傍から余計なことを言うわけにもいかない。
「あの……」
「何も知らない一花が気付くんだもんな、カッコ悪」
「そんなことはないです!」
東屋さんの一言に、つい反応してしまった。
全然、カッコ悪くない、寧ろ私は、その横顔がすごく好きで、だから。