恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
さておき、視覚情報のインプットはすぐに終わり、日々の業務内容の説明を聞く。
とりあえず研修中は東屋さんに着いて営業先に出向いたり、後は必要な書類、資料の作成を学ぶ。


ここらへんは、大丈夫そう。
パソコンは結構得意。


得意分野を見つけると、初出勤で緊張していたのがほんの少し、気が楽になる。
問題は、自社製品を覚えることだけど、かなりの量だった。


製品画像と説明を、自分で画像に取って小さくファイリングしておけばとりあえずのマツナギになるかな。



「この製品一覧、お借りすることはできますか」

「どうぞ。ああ、ちょっと待って」



どさっと重たい、ファイル一冊。
東屋さんがぺらぺらと捲りながら幾つか付箋を貼っていった。



「このピンクの付箋のとこ最優先で覚えると仕事まわりやすい。後は特殊なものだったり滅多に出ないものだから」

「ありがとうございます」



ピンクの付箋、最優先。
これで闇雲に覚えないですむ。


東屋さんの説明は、すごく丁寧であり無駄もなく、とてもわかりやすかった。
仕事デキる人なのだろうか、イケメンでデキるとか最強だよね、と少々脳内が仕事から脱線しそうになった時だった。


コンコン、とノックの音と一緒にコーヒーの良い香りが漂って。



「お疲れ様です」



と、女性の声が聞こえた途端だった。
ファイルを見ていた東屋さんの顔が、扉の方を向き私の視界で横顔になり。


ふわっと花が咲いたように、たまらなく柔らかく、緩んだ。


< 5 / 310 >

この作品をシェア

pagetop