恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
え、何その反応。
だって糸井さんとか絶対嫌だし、彼女がいるって嘘なのは知らなかったけど下心満載なのはちゃんとわかってたもん。
あ、私が余りに礼儀知らずだからどよめいてるのか。
いかんいかん、ここはちゃんと社会人として。
しゃん、と背筋を伸ばしてなんとか自力で立つと、
「東屋さんに、送っていただきたい……です……」
頭を下げたら足元がふらついて、頭から東屋さんに向かって突っ込んだ。
ああ、また塩対応で押し退けられる。
そう予測して全く期待なんかしてなかったのに、意外にもちゃんと受け留めてくれた。
額がスーツの胸に当たる。
私の二の腕を掴む手の大きさに、なんでかぼーっとして離してほしくないなあ、なんて。
心臓がやたらと忙しく働いて、顔が熱い。
日本酒を飲み過ぎたんだきっと。
頭を預けたその姿勢のままでにいると、なんでか周囲が急に取り繕うように声を上げ始めた。
そういうことなら、私達はこれで。
みんなおつかれー、解散解散。
ちくしょー、ひとちゃん一目惚れだったのに!
とか。
最後の声は糸井さんだ。
あ……あれ?
これ、もしかして……誤解を招いて余計な気を遣わせてしまった感じ?
しかも東屋さん的にはかなり迷惑な感じで?
ひやり、と酔いが冷めていく途中で、更に決定打。
西原さんの声がした。
「……じゃあ。ほんとにいいの? 一花さん任せて」
「いいですよもう今更。っつかうちの部署ってなんでこう、すぐ色恋に繋げたがるんでしょうね」
西原さんにも、もしちょっとでも誤解されてたら、東屋さんに私めっちゃ恨まれる気がする。