恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
息があったかくて、柔らかい。
何、してるんだろう、私。
じっと至近距離で見つめ合ったままでいると、不意に唇がくすぐったくなって驚いてネクタイの手を離してしまった。
東屋さんが、何か言おうとして唇を動かしたのだ。
距離が出来てしまって触れ合わなくなった唇が目の前にある。
今になって急に自分が何をしたのかを自覚して、茫然と彼を見上げた。
「……す、みません」
「一花、」
「忘れてください。犬にかまれたと思って」
「犬って」
「それか通りすがりの事故みたいな」
酔ってた。
今も酔ってるけど、流石に頭の中は冷えてきた。
平静を装うにも、顔に熱が集まるのがわかる。
泣きそうになってしまって、焦った私は東屋さんを突き飛ばして距離を取ると。
「お疲れ様ですまた来週」
「おい!」
ぐるん、と回れ右して、その場を逃げ出した。