恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
私を見ない、さよさんばかりを見ている横顔が好きだ。
叶うことない気持ちを静かに抱いた、その横顔を好きになってしまってたんだ。
だから東屋さんの恋に同調して、苦しくて仕方なかった。
私の恋も叶わないと、わかってしまうから。
振り向いてくれない東屋さんを好きでいるしかないのだと、悟らされてしまうから。
苦しい。
東屋さんは、こんな痛みをずっと抱えてきたんだ。
頭が重くて、泣きそう。
おまけに口の中がカラカラで……。
咽喉が、痛い。
「……けほっ」
かっさかさに枯れた咳が出て、ぱちっと目を開けた。
目の焦点が合わなくて、うつ伏せのまま柔らかい枕に顔を押し付ける。
すりすりと顔をこすりつけて、ほっと身体の力を抜いてから再び横を向いて頭を落とした。
「あー…………」
出た声もガラガラに枯れていて、オッサンみたいな酒焼けした声だった。
頭がぼんやりとして、状況の把握に暫くの時間を要する。
「…………」
あれ?
ベッドに寝たまま、横向きで見る部屋の壁は、見慣れた私の部屋のものではない。
人がギリ通れるくらいの隙間があって、すぐに壁。
ちょっと目線を上げると壁の上の方に横長の窓があって、黒のプリーツスクリーンの隙間を縫って陽の光が漏れていた。