恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
よく見ればシーツも黒だ。
私はこんな禍々しいというか、なんかエロエロしい雰囲気を感じる色のシーツは使わない。
白い無地とパステルカラーのストライプ柄の二枚を交互だ。
つまりここは。
私の部屋じゃない。
そう気付いた瞬間から、此処はどこだという疑問となぜ此処に寝ているのかという疑問を解きに忙しなく頭が働き始める。
夕べ、なんだった?
歓迎会で日本酒で潰されて、それからどうした?
記憶を辿れば、途切れ途切れではあるものの、鮮明に思い出せる泥酔した上での狼藉。
酒が抜けてしまった今となっては、頭を抱えたくなるような事態だった。
あんな風に、自分からキスなんかしたのは初めてだった。
確かに酷く酔っていた。
けど、酒の上での戯れなんてものじゃなくて。
気持ちが溢れて自然と吸い寄せられたような感覚。
花に誘われた蝶々みたいに。
哀しい恋に誘いこまれて、寂しさやせつなさを埋めたくて。
……私なんぞに簡単に埋められるわけもないのに。
「……なにやってんの私」
ほんと……なにやってんの。
恥ずかしすぎて週明けどんな顔すればいいのかわからない。
っていうか、ちょっと待って。
結局ここは、どこ。
あのあと、東屋さんからは全速力で離れた。
走った後で急に酔いが回って立てなくなって、それから。
『……お前、ほんとに質悪い』
記憶が途切れる寸前聞いた声は確かに、逃げてきたはずの東屋さんの声だった。