恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
何もなかったとはいえ、ベッド上。
昨日好きだと気付いたばかりの人と、一足飛びのシチュエーションに緊張して手が震えた。
「しかも俺、早歩きでついてっただけで普通に追いついた」
「……まじですか」
「うん」
か、カッコ悪。
あんなに頑張って走ったのに。
情けない上に恥ずかしい。
ぼぼぼ、と顔に火がつく私を余所に東屋さんの声は非常に冷静だ。
「酔い過ぎ」
「す、すみません」
「送ろうにも寝ちまって住所もわからないし」
面目次第もございません……。
あのまま意識を失って、やむ無く自分の部屋に上げるしかなかったんだろう。
項垂れていると、視線を感じて顔を上げた。
気怠そうに髪をかき上げるその仕草のまま、じっと東屋さんの目が私を観察していることに気が付いて、ぴきっと固まった。
「……なんですか」
「別に。荷物、そこ」
別に、という視線ではないのだけれど。
やっぱり、昨夜散々迷惑かけたことを怒っているのだろうか。
だけどこれ以上謝ろうにも、昨夜の話を余り掘り返してあのキスのことに話が触れたら最後、私は自分の気持ちを吐いてしまいそうだった。
言ってしまって東屋さんの負担になりたいわけではない。