恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】

男の横顔が、そんな風に華やぐなんて印象は、初めてだった気がする。
トレーにコーヒーカップを二つ乗せて来た彼女を見て、東屋さんは「さよさん」と呼んだ。


そうか、彼女がさっき言ってた西原さん。
営業補佐の女性社員を一斉に紹介された時は覚えきれなかったけれど、その中に居た人なのだと思う。



「ありがとうございます、さよさん」

「ごめんね。邪魔じゃなかった?」

「全然。そろそろコーヒーの時間かなと思ってドア半開きにしてたんです」



……ん?
あれ?


ドアを半開きにしておいてくれたのは、私への配慮ではなくコーヒーの為だったらしい。
もっと正しく言うと、彼女がトレーを持ったままドアを開けやすいようにということらしい。



ほわん、ほわん。
と花を撒き散らす東屋さんの横顔を見て確信。


いえ、別にね。
ばったん閉められていようと半開きだろうと私は気にしませんけどね。


勝手に勘違いしただけですけどね。



「一花さん、好みがわからなかったから砂糖とミルク両方つけといたよ」

「あ、ありがとうございます。嬉しいです両方要ります」

「了解です、覚えときます。もしお昼、時間が合ったら一緒しようね」



空になったトレーを片手で抱き、彼女はひらひらと片手を振る。
中肉中背、黒髪肩より少し下、毛先ゆるふわ、顔立ち…………シンプル。


「はい是非。ありがとうございます」


優しそうな人だと少しほっとしながら彼女の背中を見送って、すぐ。
東屋さんから先程のファイルを受け取る。


「で、次だけど」


もう、さっきみたいにふわふわ花は飛ばしていなかった。


わかりやすっ!
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