恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
今は、朝の七時。
多分京介くんは土日は遅番だから……昼までに連絡してなんとか会うことはできないだろうか。


正直、会うのは物凄く気まずいし怖いけれど、私からちゃんと話さないといけないことだと、意外とすんなりと覚悟は決まる。



「……彼氏?」

「はい」

「平気?」

「大丈夫です。後で連絡するので」



迷いなくそう答えて、携帯を鞄に仕舞った。
自分の勝手な心変わりだ、自分で決着をつけなければいけないしましてや東屋さんに話すことでもない。


とにかく心配をかけてしまったんだし早く連絡を取らなくちゃ、と帰る算段を立て始める。



「すみません、ここから一番近い駅ってどこですか」

「中央公園駅。帰れる?」

「ありがとうございます。大丈夫です」

「慣れてるね」


淡々とした言葉のやりとり。
最後の一言に少し棘を感じて、顔を上げた。


「慣れてんだ? こういうの」


いい意味ではないことに、すぐに気が付いた。
彼氏がいるのに泥酔して他の男の人のところに泊まってしまった、この状況のことを言われてるのだ。


慣れてる、わけでは。
ただ、昨夜のことを謝る以前の問題なのだと覚悟しているから落ち着いて見えるだけで、こんな展開は私も初めてなのだけど。


そう主張するには、今の状況は説得力がまるでなかった。

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