恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
更には昨夜の狼藉もある。
返す言葉が見つからず、出来てしまった間は肯定と受け取られてしまっても仕方がない。
ふ、と鼻で笑った東屋さんに、責められているように感じた。
ああ。
さよさんなら、こんなことはしないと頭の中で比べられているのだろうか。
そう思うとたとえ自業自得でも、胸が痛い。
「え、っと……帰ります。すみません」
目を下方に逸らして、なんとか唇だけ笑った。
鞄の柄を握りしめると、東屋さんから遠ざかり反対側からベッドを下りる。
「迷惑かけて、すみませんでした」
今度こそ軽蔑されたかもしれないな、と思えば尚更、もう私の気持ちなどたとえ言っても信じてはもらえまい。
そしてやっぱり、例えそのことがなくとも言うつもりはなかったり、する。
東屋さんに向かって頭を下げ、彼の顔は見ないまま背を向けた。
急ぎ足で玄関に向かい、靴を履く。
彼はベッドから動いていないと思っていたのに、すぐ真後ろで声がして驚いた。
「……一人で帰れるの」
「えっ、はい。大丈夫です」
「道は?」
「携帯のナビがあるので、駅名さえわかれば」
静かな声音。
嫌われたのだと思ったのに。
心配してくれているのだろうか。
振り向くと本当にすぐ近くに東屋さんが立っていて、声音と違わず静かな表情で私を見下ろしていた。
「……そう」
と、短い返事が落ちてくる。
いつもより一層身長差を感じてしまうのは、私が土間で彼が一段高いところにいるからだ。