恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
優しいのか怖いのか、今日の東屋さんは全然表情が読めない。
今も、優しい言葉をかけてくれても表情が動かなくて、それが尚更怖い。
「じゃあお疲れ。気を付けて」
「は、はい。お疲れ様で……」
ふっと視界に影が差して、不思議に思う前に彼の手が近づいた。
壁に大きな手が置かれ、それを支えに彼の顔が傾いで目の前に迫り。
ふ、っと唇に暖かい吐息が触れる。
そのままゆっくりと、無防備だった唇を啄まれた。
……え?
昨日、私から触れ合わせたくせに、何が起こってるのか一瞬理解できなかった。
ただ重ねただけの昨日と違って、今触れ合わせたのは確かに立派な、キスだった。
舌を絡めたわけでもないのに、しっとりと濡れた唇の肌が滑り腰が震える。
「ほんと、一花はわからない」
「え、」
「慣れてるくせに、キスは子供みたいだった」
「あ、あの、」
「あれじゃ、噛まれたうちに入らない」
唇を近づけたままの会話は、それだけで電気が走ったみたいに身体の奥が痺れた。
返事もままならないそのうちに、また肌が滑って角度が変わる。
今度は深く、唇を割られた。