恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
東屋さんが、私にしか聞こえないくらいの小さな声で、ごちた。
「……最近、なんで給湯室によくいるの」
「私のせいじゃないですもん。西原さんがコーヒーの淹れ方教えるからって」
東屋さんがひっそりと西原さんとのひと時を癒しにされてることもわかってますから!
私だって決して決して、東屋さんの邪魔をしたいわけではないですけども!
西原さんが、これもまた突如、私にコーヒーを淹れるのを手伝って欲しいと言い出した。
最初は気にしないでって言ってたのに。
勿論、私だってコーヒーを淹れるのが仕事だと言われれば当然引き受けるし、西原さんの隣に居ればひっそりと東屋さんの近くに居られるわけで、願ったり叶ったりだ。
確信がある。
ほんの少しでも、この恋に望みを持ってしまったら、きっと続けることは苦しいだけになってしまう。
だから叶えたいなんて思わない。
私を見て欲しいなんて考えない。
ただ東屋さんがひっそりと続けてきたように、私も間近で東屋さんの横顔にほわほわと癒されればそれでいいのだ。
そして今日も今日とて、私は東屋さんの横顔の輪郭を辿り幸せ気分を満喫していると、ちらりと冷やこい流し目が注がれた。
「一花さぁ……」
「はい?」
「あー……いや、やっぱりいい」
ふいっと、目が逸れる。
それから口元に手を当てて何かを思案しているようで、そんな風にされたら当然気になってしまう。
「え、なんなんですか。気になるんですけど」
「いい。仕事のこと。一花には関係ない」
「ええっ、なんですか。手伝いますよ回してくれたら!」
プライベートで関われないんですからせめて仕事で関わらせてくださいよ!
なんでもするのに!