恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
「今まで取引がなかったハウスメーカーだが、新しく開拓する住宅地の資材でうちの壁紙と床材を使いたいと話があった」
「足立さんからですか?」
「いや、そこの一級建築士から。業者会で覚えてないか?」
全く、記憶にない。
ということは多分、話もしてない人だろうか。
首をかしげていると溜め息混じりの声が東屋さんから聞こえた。
「一花は覚えてないだろ。俺が相手してたから」
「そうでしたか」
何せ、業者会というだけあって資材メーカーは勿論、工務店にハウスメーカーもたくさん来てたから、自分が話してる相手だけで手一杯だった。
「その田倉建築士から、打ち合わせに一花も連れて来いと要望があった。行くか?」
「行きます」
「ちょっ……、藤堂部長?!」
「一花は営業を希望してる。勉強になるだろう」
「だからって此処じゃなくても、」
「遅かれ早かれ経験する。それにお前なら上手く纏めてくるだろ?」
「は?」
「一花がいようがいまいが、上手くやれるだろう」
「…………」
「だったら、一花が一緒にいても纏められるよな。『何事』もなく」
なんで、そこまでの言い合いになるんだろう?
私の頭の中ではハテナマークが飛び交いながら、二人の顔を交互に見ていたのだが。
東屋さんが、口を開けたまま絶句した。