恋に涙を花にはキスを【コミカライズ連載中】
会議室と書かれていたこの部屋と隣の事務所のような空間とは、腰くらいまでの高さの壁と上はガラス窓で仕切られていて、東屋さんと他の春日住建の社員らしき人達の姿がそこに見えた。
その中にぽっちゃりバーコードさんが居た。
「あ、あの方、確か」
「ん? あ、そうそう。業者会で君とずっと話してた足立さん」
あ、良かった当たりだった。
「僕も喋りたかったのにさあ、なんか近づく機会がないまま終わっちゃって。そしたら足立さんが、一花さんって若い子が面白かったって」
「ええっ? 面白かったのは足立さんの方でしたよ?」
「いやいや、なんかさ、物怖じしないっていうか。君、まだ大学出たとこでしょ? 最近の若い子にしちゃ度胸があるって」
「足立さんが優しく接してくださって、話しやすい方だったからですよ。でも何か失礼なこと言わなかったかなって、気になって」
「ほめてたよ。営業向いてそうだなって」
「えっ、ホントですか」
つい嬉しくなって、身体を乗り出してしまった。
すると、意外だったのか田倉さんは少し目を見開いていた。
「へえ、君、営業やりたいの?」
「はい。でもうちの会社では女性の営業っていなくて、補佐的な仕事ばかりで。男社会だから女性は受け入れ難いんでしょうか」
「いやいや、そんなことはないよ。でもこう、営業やりたいって意欲的な女性も少ないからなあ」
「……それって、やっぱりセクハラとかが多いからですか」
「え? あー……いやあ、どうかな?」
「あ、すみません! 男性社員にこんなこと聞くなんて失礼ですよね、すみません」
なんちゃって、わざとだけど。